采配 落合博満
前回の続き 第6章 次世代リーダーの見つけ方、育て方 についてです。
ー俺のやり方は、おまえのやり方ではないー
技術、仕事の進め方というものには「絶対的な基本」がある。しかし、「絶対的な方法論」はない。より正確に書けば、野球の世界で、勝つため、技術を高めるための絶対的な方法論はまだ見つかっていない。だから、新人にアドバイスする場合に気をつけなければいけないのは、どこまで基本を理解しているかを感じ取り、足りない知識があれば伝えてやること。つまり、あくまでも基本の部分に関してコミュニケートすることなのだ。
ー引き継ぎは一切しないー
実はビジネス、政治など多くの世界でも、リーダーにとって大切なのは、仕事を引き継いでいくことよりも自分自身の方法論を部下に明確に示すことではないだろうか。
企業であれば、理念や習慣といったものは「引き継ぐ」というよりも「受け継がれる」ていく。そして、リーダーが交代するタイミングというのは、組織の若返りを図ろうとしていたり、新しい風を吹き込もうとしている場合が多い。その際にリーダーが明らかにすべきなのは、自分がリーダーになった組織は何を目指し、そこまでどういうプロセスで到達しようと考えているか、ということなのだ。
ー誰をリーダーにするか。尊重すべきは愛情と情熱ー
ルールで決められたことは、どんな理由があっても守らなければいけない。ただし、そのルール自体に抜け道があったり、時代にそぐわないものになっていたら、徹底的に見直すことも必要だろう。ルールがその世界の発展を停滞させるものであってはならないからだ。
自分が身を置く世代に愛情や情熱を持ち、着実な変革を目指そうとするリーダーは誰なのか。
ー仕事の成果と幸せに生きることは、別軸で考えるー
プロ野球選手が、「勇気を与える存在」と言われるように一種の影響力を持っているのは、多くのファンの前で試合を行ない、それがメディアを通じて世間に伝えられるだろうか。
外資系を中心に、契約社員、出来高制といった欧米流の雇用形態を取る企業も増え、ビジネスマンも明日なき戦いを演じるようになった。私自身は、ビジネス界のほうがプロ野球選手から「勇気をもらった」という言葉に、ありがたいと思う半面、どこか違和感を覚えてしまうことがある。
最後の章は、野球とは全く関係ない。人間としてどうあるべきかというところが問われている。私自身も、リーダーは「他人に嫌われる」仕事であると考えている。そして、「他人を評価する」仕事であると思っている。高校野球の監督や教員の仕事とは、生徒の相談などを聞くだけでなく、一線を引いて評価することが大切であると考える。
采配 落合博満