勝てる野球の統計学 鳥越規央
1″無死満塁”は点が入りにくいのか?ー野球のセオリーを検証する
「得点期待値」とは、あるアウトカウント、塁状況から攻撃した場合、イニングが終了するまでに何点入るかを示したものだ。
野球というスポーツと数字はとても関係が深い。私も選手を見る時に数字を利用している。ケース別に説明する時も数字を使うことで説得力を持たせることができると思う。その意味で、「サイバーメトリクス」を学んでおく必要がある。
野球は3アウトを奪われる前に本塁(4つ目の塁)を踏む数を競いうスポーツであり、1つのイニングには「0,1,2」のアウトカウント3種類と「走者なし、一塁、二塁、三塁、一二塁、一三塁、二三塁、満塁」の走者状況8種類を掛け算して得られる24種類の状況があることを確認しておきたい。
野球を続けてきているからこそ、”常識”で済ませている部分を再度定義されると新しい気づきが多い。ケースノックはランダムにケースを定めて複雑な練習であると思っていたが、厳密には24通りしかないケースを反復練習する練習なのだと気づくことができた。
無死満塁から攻撃を始めると、平均的には2点以上入るということとなる。これは24の状況の中で最も大きい値であり、「”無死満塁”からは得点は入りにくい」という通説に反し、最も多くの得点が期待できる状況であることがわかるだろう。
当たり前のようで、数字にすると明確になる。しかし、無死満塁はダントツで得点期待値が高い訳ではないことも知れて面白かった。満塁策の意義についても考えさせられる。
最も出現回数の少ない状況は”無死走者三塁”の1057回、つまり無死走者三塁は1年で約100回程度しか起こらない状況なのである。
確かに、回の先頭がスリーベースを打たない限りないないケースなのでほとんどないのか。
”無死一塁”では0.821だが、”1死二塁”では0.687と低くなっていることが分かる。
送りバントを成功させた後の得点期待値が下がっており、アウトカウントを増やすことは攻撃側にとってリスクであることが分かるだろう。
送りバントは有効ではないということの数字的証明に。
得点確立は「あるアウトカウント、走者状況が出現した後、イニングが終了するまでに1点以上取れる確率」を示すものである。
ここで無死一二塁から1死二三塁、無死二塁から1死三塁の得点確率の変化に注目すると、得点確率が上がっていることを確認できるだろう。つまり、これらのケースの送りバントに限ると、成功すれば得点確率が上がるというデータになっている。
一点取れば勝てる、特に終盤の局面で送りバントを利用するべきだということ。序盤で送りバントを利用する意味はない。
プレミア12でも負けてから、「なぜ送りバントをしないのだ。」という批判が出るが、数字からも送りバントは常套手段ではないということを野球人の中では常識にしていかなければ。
「プレーの価値」=「プレー時に入った得点」+「プレー後の得点期待値」ー「プレー前の得点期待値」と定義する。
選手の個人成績を見る一つの指標に。
ー「得点」を「勝利」に換算するー
数学の「ピタゴラスの定理」を連想させる式である。この式の基本的な考え方は
・得点と失点が等しければ、勝率は5割である。
・得点が失点よりも多ければ勝率は5割を超え、少なければ5割に満たない。
チームを見る一つの指標に。
根性・やる気・気合なんかというものより信用なるのだ数字である。言葉ではなく行動で示せ、それが数字に表れると思う。数字に興味を持てる選手が強くなると思うし、自分のモチベーションにもなると思う。
勝てる野球の統計学 サイバーメトリクス 鳥越規央