バッティングの理屈 落合博満
第5章 上半身のメカニズム「”バッティングの壁”は誤解されている」
ーフォロースルーでは回転運動のパワーを逃がそうー
また、「投げたあとのふらつく動きを抑えよう」などと考えたら、回転自体に大きなパワーを加えられなくなるだろう。私はハンマー投げをした経験はないが、この見方に違いないと思う。
スイングの基本うんぬんは一切考えず、体がふらつくほど力まかせにバットを振ってみる。フォロースルーが大きくなり、バットのヘッドが無理なく抜けていくのが実感できるはずだ。実は、フォロースルーの階段まで体の投手寄りの側面に壁を作ることを意識せず、体が開いても大きくバットを振り抜くことが、より強くより遠くへ打つための秘訣なのである。
フォロースルーの階段で壁を作ることの弊害。
壁を作ったフォロースルーでは、バットを振り抜く場所が制限されてしまう。
まとめると、『体の投手寄りの側面に壁を作る』ことは、バットと両腕が一直線になる瞬間までは大切である。
「壁を作りなさい」という指導者の言葉を聞き流し、フォロースルーではパワーを自然に逃がす方法を模索した。
プロでは「落合のスイングは体が開いている」と言われていたが、私には「理屈に基づいてやっている」という自信があった。そして、高い数字を残すと、そうした声も聞こえなくなった。バッティングにおいて、やはり理屈は大切なのである。
落合博満 バッティングの理屈 三冠王が考え抜いた「野球の基本」