香川県立小豆島高等学校
[約束事あっての「ボトムアップ」]
近年流行の「ボトムアップ」型野球部経営。センバツ出場も決めた小豆島高校がどのような取り組みでここまで勝ち進んできたのかその発想の種に触れたいと思う。
入り口で目を落とすとすぐ視界に入ったのは、ポジション別・月別に詳細に記された成長新歩計画書。右側に転じると「1人1役リーダー制」の分担表。首を回して上を見ると月別のチーム目標とチームをレストランに見立てた3月開店予定「レストランパイレーツ」のお品書き。その最後には「ボトムアップ仕立て」と締められていた。まずはその真意を杉吉監督に聴いてみよう。
[自律=「大人になる」ための活動]
「大人になること」とは
「大人になるといってもいろいろあるんですが、まず言えば野球がうまくなっても、うまくならなくれも、自分で責任を取ること。よく言います。『うまくならなかったのは指導者のせい』。いや、違います。うまくならなかったのは自分のせいなんです。様々なことについて1人ずつ、全部員が責任者になってもらう『1人1役リーダー制』もその一環ですね。」
[選手主導で昇る「自律」の階段]
「以前は『成功しないといけない。成功するようにして選手に渡してあげないといけない』と思っていたんです。でも、昨年12月に畑先生のボトムアップ理論を聴いて『失敗させてあげることで気付きがある。失敗したときにフォローしてあげればいい。失敗に気付かないから同じ失敗を繰り返す。成長しない。失敗が次の成功につながる』ということに気づいたんですよね。」
その気付きが試合や練習における選手主導のプランニングへとつながっていった。練習では「メニューが切れるごとにマウンド上に集まって1分間で確認する」一方、練習試合を含めた試合プランニングはこんな流れである。
1.試合前日、スタッフが対戦相手の情報を提供
2.選手たちが情報を土台に話し合い、試合のテーマを設定
3.試合中にも微調整を施しつつ、5回のグラウンド整備時にテーマ達成度確認 再設定
「最初は決まった人からしか意見だ出なかったけど、だんだんみんなから意見が出るようになった」と主将が振り返る成長ん過程。そのミーティングをランニングチーフ及びファシリテーターとして司るのが河原愛都だ。
春に向けてチームスローガンは「変化・進化・開花」。そこを実現する場所がどこであろうとも彼らは選手主導で「自律」の階段を1つずつ昇っていく。
こんな風に選手と関係性を気づければ理想的だろう。さらに結果がついてきているので確かな自信になりつつあると思う。
高校生を指導している時にメニューなどを考えさせると大たいが1パターンに陥りがちである。しかも、チームの課題などは無視して自分たちのやりたいメニューを選びがちになる。結果、自主性などという言葉をいいように受け取り結果につながらず指導者が責任を取るというパターンが多いのではないか。
加えて、最近の若者は「嫌われてまで他人に厳しいことを言いたくない。」というような人間が多いような気がしている。チームスポーツをしているにもかかわらず、個人スポーツをしているような感覚だ。もちろん、個人練習したりして個々のスキルを高めることはとても重要であるが、それ以上に大切な人間としての成長を野球部で学べていないものが多いと思う。
それと比べると、小豆島高校のこの取り組みを成功事例として、これからの高校野球で積極的に取り組んでいかなければいけない内容になるだろう。
とても参考になる興味深い内容に記事だった。