投手論
吉井理人
【第1章 投手のダンティズム】
[磨いたプロ意識]
・酒に強くない僕は、たまに誘われて酒を飲みに行くことはあったが、それでも登板の前日は飲まない。シーズンオフでもブルペンに入る前の日は、アルコール類は決して口にしなかった。
・そういえば、日本ハムの投手コーチになった時、ダルビッシュにこんなことを質問した。「先発ピッチャーとして大事なものは何か分かっている?」「はい、コンディションです」おっ、コイツ、野茂みたいなことを言いよるな、と感心すると、どうやら少し前に野茂と食事をしたらしかった。
・野茂のフォークが他のピッチャーと違うのは、フォークというのは普通は挟んで投げることで回転をなくすわけだが、野茂は意図的に回転をかけている。回転がかかっていることで、打者に「フォークだ」と見破られにくいし、回転していればワンバウンドした時も捕手は止めやすい。野茂はそこまで考えて投げていた。
・80年代末のオークランド・アスレチックスの黄金期に活躍したデーヴ・スチュワートが真っ直ぐの軌道から一瞬外れて、ボールがホップしてから落ちるようなフォークを投げていたが、野茂のフォークはメジャーではスチュワートより高く評価されている。さすがにフォーク素人の僕に、回転をかけて落とすまでの技術は無理だ。
・実際はほとんど投げていないのに、打者が勝手にフォークを意識してくれる。フォークを意識させておいて、実際はショートばっかり。面白いくらい打者を打ち取られた。
next:「投手論」7
back:「投手論」5
#野球 #baseball