東大と野球部と私
桑田真澄
【第4章 大事なことは「明日」と「次」】
[投球術のレクチャー]
・投球術では、3種類の球を組み立てていきます。一つ目が「カウント球」です。ストライクのカウントを稼ぐための球。見送り、空振り、ファウルのいずれかでカウントを稼ぎます。投手有利のカウントにすることが目的です。
・二つ目が見せ球。これは、目の錯覚を使って次の球を効果的に活かす球です。例えば遅い球を投げて、その後に速球を投げることでより速く見せる。打者に近いインコース高めに投げて、次にアウトローに投げ込んで遠くに感じさせる。次の1球を活かすための見せ球は、ボール球でいいのです。
・三つ目が勝負球。これは、アウトに取る球です。三振、ゴロ、フライのどれでも構いません。勝負球を決めるためには、ピンポイントで四隅に投げらなくてはなりません。勝負球のストレートはストライクゾーンの四隅、変化球はストライクの軌道からボールになります。
・サインを決める段階で、バッテリーはこの三つのうちどれを投げるか、意思疎通が必要です。
・今後は試合を含めて月に最低600球投げるよう提案しました。毎日20球×30日で600球になります。1日おきにしても40球×15日で600球。投手として競技力を高めるには、これくらいは最低限必要な球数です。ただし、ネットピッチングや遠投は不要。必ずブルペンで傾斜を使って600球を投げてくださいとお願いしました。
私は、前半の3点について、中学生ともこの会話を続けています。しっかり会話をし、自分を理解できれば勝てる投手になります。できないことに目を向けず、できるかのように振る舞い続けさせることは選手を潰すことになります。客観的に何ができるかを選手に、投手に理解させる。これが、指導者ができることの一つです。
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