東大と野球部と私
桑田真澄
【第6章 科学の視点から野球を再認識する】
[これまで培ってきた感覚の再考]
・このプロジェクトでは、投球の「コントロール」と「キレ」について神経科学の観点から迫るという方向性を打ち出しました。
・僕はストレートとカーブでは右腕の動きが違うイメージを持っていたのですが、映像を実際に見て見ると手首の使い方以外はほとんど同じだったのです。
・また、超スロー映像やモーションキャプチャーシステムで計測したデータを分析したところ、左足を上げるタイミング、踏み込みタイミング、体の回転、投球腕の軌道、そしてリリース位置のどれもが、1球ごと、球種間でほとんど誤差がなく、高い再現性が見られました。ある海外の研究者の報告によると、投手のボールリリースのタイミングはわずか1000分の数ミリ秒の誤差しかないそうです。これだけ全身を使った運動で、かつ150キロに迫る球速のボールを投げる中で、たったそれだけの誤差でボールリリースを制御できていることに、改めて人間の能力の凄さを感じました。