甲子園という病
氏原英明
【第一章 玉砕球児が消えない理由】
この夏、甲子園は100回大会を迎えた。その裏で、世間では一冊の本が発売された。「甲子園という病」というタイトルのこの本は、発売されながら一人の選手を全国クラスへの押し上げる起爆剤にもなったのではないかと考える。
その選手の名は、金足農業高等学校エース・吉田輝星選手だ。
吉田選手の活躍を思い出しながら、本著の第1章の内容から触れていこう。
第1章に挙げられていた内容は、5年前の甲子園大会「木更津総合vs西脇工業」の試合で先発した、木更津総合の千葉投手の話題だ。
一回裏、木更津総合の先発・千葉が一球目を投じると、そのざわめきの正体が何であるかはすぐに理解できた。千葉は初球、これが全国大会の舞台で投じる球なのかというような、山なりのボールを投げたのだ。二球目、三球目、四球目…。そして、カウント3ボール2ストライクからの六球目も同じような山なりのボールを投げたのである。それは投球練習からすでにそうだったのだ。
痛み止めの注射を打ちながら、予選から千葉大会も投げ続けていた千葉選手。肩の痛みは慢性的なものになっていただろう。千葉選手は「甲子園が魅力的すぎる」という発言を残している。
今年の100回大会でも、吉田選手が決勝までは一人で投げきり、一大会5試合で749球、平均約150球を投げた。現代の医学的常識からいえば、とっくに限界を超えていると思われる。
この流れを受けて、ネット上でも「球数制限」「回数制限」などの意見も多く上がってきた。確かに、ルールを決めてしまえばチームはそれをやらざるを得ない状況を作り出せるが、野球界には岩盤のように硬い固定概念がはびこっているため、なかなか難しい部分も多いと思われます。
意見は色々ありますが、この問題も0:100理論は語れないし、答えのない問題だと思うので私の野球指導者としてのポジションを明確にしておこうと考える。
【体修塾のポジション】
・練習で球数・強度設定をする。
・試合ではピッチスマートの数字を目安に、指導者が球数を管理する。
・人生のかかる試合では、選手と指導者が対等な立場として会話ができる場合のみ選手の意志を尊重する。
・どちらにしても、指導者はいろいろな知見を持ち合わせ怪我をさせない不断の努力を続けないといけない。
というポジションです。どちらかというと制限派です。
ですが、吉田選手の投球フォームは素晴らしく。怪我をしにくいきれで、美しいフォームをしていた。球速・キレ・コントロールとも素晴らしい投手だった。かつ、クレイジーでありながらクレバーでもある。150km/hと130km/hのストレートを使い分けなどは素晴らしかった。球速もMaxをあげることで、負荷設定の低い130km/hを投げることで、多く球数を投げながらも怪我のリスクを下げることができていたのだ。
ここから、学ぶことも多くあるだろう。
そちらにしても、色々考えさせられる本著であり、100回大会であった。
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